逢不レ会恋(あひてあはざるこひ)
「こんなの間違ってる。」
そう言ってあなたはぼくに別れを告げた
震える声と、白濁した残滓に穢された細い両脚
世間の指し示す正しさを今更に選ぶという
背徳の黒に浸りきったあなたが
何処に逃げ場を求めるというのか
ぼくはきれいに嗤ってみせた
誘いかけてきたのはあなたのほうだった
何も知らない子どものぼくに
血の濃さを盾に、美貌を武器にして
はじめから「きれいだね。」と囁いたあなたの
記憶の中に透けて見える業の根深さ
まっしろだったぼくへ墨を落とし込むように
あなたが触れた指先から
容易く灰色に染まっていった
「七月には逢えるのかな。」
そう呟いたぼくに
「予定日どおりなら、咖那《かなん》くんと同じになるのね。」
純白の衣装で身を鎧った花嫁は
嫋《たお》やかな指で胎を撫で
無邪気に、そして艶《あで》やかに微笑んでみせた
「きれいな子だといいね。」
ぼくは
年下のいとこがこの世界に産み落とされる日を
心から愉しみにしている
twitter企画
#百人一首でBL一次創作
四十四 中納言朝忠
逢ふことの絶えてしなくはなかなかに
人をも身をも恨みざらまし
百人のBL作家で百の物語
— 三谷玲🔞紅団扇庵🌸春庭売り子 (@h8hMKuPGBDRQHrG) December 19, 2019
今も昔も同じ
心揺さぶる百の思いを…#百人一首でBL一次創作https://t.co/jaThyu3yBM
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