アイツと奴隷の日々


初出
2020/03/25 11:51 Twitter

異世界転移モノで。俺tueeee的なご都合主義イージーゲームに慣れきった高校生があっという間に借金まみれになって奴隷落ちするんだけど、クソガキ呼ばわりしていた、どうもり育ちの中学生に身請けされるあれやこれや。というのが浮かんだよね。あつもりやってます。

中学生×高校生。中学生に買われて連れて行かれた先に立派な家が建ってて唖然。「ここ、おまえんち?」「そうだけど? 権利関係もちゃんとしてるから安心して」とか言われてこれまでの不安な日々に終止符が打たれたと、ブワッてきちゃうけどクソガキに弱いところも見せたくないし強がる高校生。

食事を買って済ませている中学生に、「メシ、作れねぇなら俺が作ってやろうか?」って言ったら目を輝かせる中学生。中学生は掃除が得意。自然と家事の役割分担が出来て、雰囲気も良くなってきた頃。溜まるものは溜まるので自家発電していたら、呻いていると勘違いした中学生が凸してきて「え」「あ」。

「ッ、仕方ねぇだろ溜まるんだから! つーかてめぇはやらねぇのかよ!」って八つ当たりしたらキョトン顔。「……そういうのって、安心した場所でしかやれないじゃないですか。うちは違ったので」と意味深な言葉を残して部屋を出る中学生。萎える高校生。中学生に初めて興味を持った瞬間だった。

以来、中学生が気になって無意識に目で追ってしまう高校生に「なんですか?」「……別に」「ああ、やるときは言ってくれたら部屋には入りませんので」「あほか、そんなこと言われたら萎えるわ」「そうですか」。その夜、何故か中学生が部屋にやってきて「視界にいたほうが安心なら、ここで見てます」。

発想が斜め上な中学生。なんやかやしてあほらしくなって、ヤケで触ってみたら興奮するし、ヤバい高校生。その気になって弄ってたら目の前に中学生が。「な、なんだよ!」「いえ、興味深いなって」「なんで俺だけこんな……わかった、お前も出せ!」斜め上すぎて捻れていくふたり。

日々の暮らしに、ふたりえっちが加わった。
高校生はノンケ、ヤンチャな感じだけどわりと普通。美形でもないし、泣いたらちょっと苛虐心ムクムクさせちゃうタイプ。
中学生は潜在的ゲイ。家庭環境が複雑で色々拗らせ系。高校生を買ったのは気紛れ。日本を知る相手がコレしかいなかったから。ごはん係。

高校生に苛虐心を刺激され苛々する。僕はそんな人間にはならないと思うのに気になる。ふたりえっちをするようになって、面白がって追い立てていたら泣いたので、味をしめる。(えっちなことで泣かせるならセーフ。お互い気持ちよくなってウィンウィン)。以降容赦がなくなる。エスカレートして挿れる。

高校生はバカなので、気持ち良ければいいかって開き直ったり、お前の頭にはエロしかないのかって中学生が機嫌悪くなったり。利用しているはずなのに侭ならなくて反抗期突入。弟のいた高校生は意外と受け止めてくれてママ化。中学生が雄っぱいに固執するようになる。
外の世界はどうなっているのか。

実は冒険者として短期間でそれなりの地位に上り詰めていた中学生に指名依頼が入る。心配だとついてくる高校生。お荷物にしかならなくて弟子入りを志願。断る中学生。「なんでだよ!」「あなたは僕に守られていればいい」あまりの言葉に絶句。別の奴に剣技などをこっそり教わっていたらバレてお仕置き。

箍が外れたような中学生に抱き潰され、中学生の抱える闇に気づく高校生。「俺、お前の奴隷だろ? 逃げねぇからちゃんと俺を見ろ」「奴隷だから一緒にいてくれるんだろ!」「そんなことねぇよ」「嘘だ!」「俺はもうとっくに、お前と生きていく覚悟決めてんぞ? お前は? お前のほうがブレてんだろ」

「ったく、奴隷だからって男にケツ許すかよ。お前だからだろ」真っ赤な顔を逸らす高校生。美形でもないイケメンでもない、ヤンキーなのに。凄く可愛い。「すぐには、むり」「おう」「でも、ちゃんとするから」「ん?」「奴隷契約を破棄して市民権を手に入れる」「べらぼうに高いやつかー」「頑張る」。

「そんなことに大金突っ込むより家に金かけようぜ。旨いもん食って、ダンジョン一緒に潜りたい。装備品もいいやつにしてさ」「でもそれじゃ」「俺、奴隷でいいよ。お前だったら契約に縛られて一生楽に暮らしたい」茶化してるけど、この世界の奴隷は主人が死ぬと生きていけない。でもそれでいいという。

婚姻より重い関係。ふたりはそれから面白おかしく暮らしていく。中学生が高校生の背を追い抜いて、十数年後。この平和がいつまでも続くと思われた村に魔獣のスタンピードが起こる。もう討伐からは引退しようと言っていた矢先のことだった。上級冒険者である攻めは討伐隊に組み込まれる。

そして、帰ってくることはなかった。取り残される受け。自分が死んでいないのだからあいつは生きている。そう言い張り、惨状となった森に探しに行こうとするが止められる。何かを握らされる。それは攻めがいつも首に掛けていたネックレス。「済まない、これしか……」あいつの遺品だという。それ。

奴隷契約の上に重ねられたのは、隷属者の死を回避する魔法。呪い返しのようなそれが刻まれたネックレスだった。受けはヨロヨロと家に帰る。森に近いのにも関わらず結界によって守られた土地は魔物に蹂躙されることなく変わらぬ姿で残っていた。

守られていた。最初からあいつに。最後まで。でもそんなの、望んでない。一緒に死にたかった。愛していた。バカヤロウ。
数日篭って、窶れてはいたけれど、なんとか立ち直って。村の復興を手伝って。そうしているうちに王都から騎士団が到着した。勇者を迎えに来たという。

そいつは、あいつが気にかけていた孤児だった。教会に住んでいたから、ふたりでよく寄付に行ったり、字や、生きていく術(金の稼ぎ方や戦い方、騙されない知恵)を教えてやっていた。「初めて会った頃のあんたに似てる」って笑ってた。こいつが勇者……。ここは『はじまりの村』か。涙が溢れた。

不安がる勇者に、一緒に王都までついてきて欲しいと頼まれる。だが、隷属印がついている(顔に入れ墨状態)の男を騎士たちは軽んじる。軽くいなし(受けも強いよ)「こいつら腐ってやがるのか? いいぜ、送ってやる。ただしそこまでだ。王都に無事着いたら俺は家に帰らなきゃなんねぇからな」と笑う。

言葉の通り王都まで送った男に、王がスタンピードを制圧した褒美を与える。あいつが命をかけて守った村だ。有り難くいただいて(無限収納袋持ち)去ろうとしたら、王が話しかける。どうしてただの村人が平然としているのか、それは聖遺物か。男はこれまでのことを語って聞かせる。

そして、男の名を覚えてやって欲しいという。個人的には何も望まないと言った男の唯一の望みだった。「そなたの名は?」「俺はあいつの奴隷だよ」愛おしげに頬の印を撫で、泣きそうな顔で笑う男を引き留める術は王にもなかった。

おしまい!

螺旋の梯子

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