断罪と忘却の薬

初出
2020.03.20 20:36

馬鹿皇太子が田舎者の男爵令嬢に恋して、婚約者の公爵令息(政略結婚)を貶め婚約破棄ようとして逆に失墜する話。政略結婚なんだから男爵令嬢を側妃にすればいいのに、わざわざ悪役に仕立てて断罪(以下略テンプレ)。

ドヤァしている皇太子と男爵令嬢だけど(テンプレ通りに卒業式とかそんな場)、王妃静かに激おこ。公爵令息と政略結婚する意味などをとくとくと語り説得するも意に介さず「彼女を愛しているのです」とほざく。王妃も最後には折れ、「その娘と結婚したいのであれば、好きになさい」と告げる。

場は静寂に包まれ、ドヤドヤァな皇太子。王妃は公爵令息の元へ行き膝を折る。「王妃として、母として、このようなことになり謝罪の言葉もありません……」。側妃たち、側近、王宮に職を持つ者たちが次々と王妃に追従し跪く。「は、母上、なにを……」。動揺する皇太子。

だが王妃の口から出た言葉は冷たかった。「もう親でも子でもない。その娘とどこへでも行きなさい」。その日、皇太子は廃嫡された。皇太子のしたことは、愛人問題に悩まされる正妻たちにとって、とても許せるものではなかった。国力を削がないためだけに、男の身でありながら皇太子の婚約者となった

公爵令息を公の場で声高に辱めていいはずがなく、第二王子に王位継承権は譲られた。この騒動の後、公爵令息は王宮の外れにひっそりと建つ塔へと居を移した。王妃として、皇太子と並び立つ者として施されていた教育は内政に踏み込み過ぎ、門外不出だった。王妃候補から外れた彼に、行き場などなかった。

ひとりきり、侘しい公爵令息を慰めんと塔に近づく者は間者ばかり。まめに訪ねてくる王妃に愛人を持つことを勧められるても、公爵令息は首を縦に振らない。それこそ、本当に自分が国家転覆の火種となりかねないと。だが、閨教育を施されていた身は夜の帳が落ちる(○下りる)と疼いて仕方がない。

王妃はそれを知っているのだ。抱くのではなく、抱かれる性に作り替えられた体は、若さゆえか理性では制御が効かない。納得ずくでの婚約だった。政治の道具になると、心を殺して尽くすつもりだった。それが今や、憐れまれるだけの存在と成り果てている。学んだ全てが枷になり籠の鳥だ。

いっそ死をと、何度願ったことだろう。だが、情をかけてくれた王妃を、婚約話が舞い込んできた幼き日に、家の犠牲となってくれと頭を下げた父を裏切れなかった。母の違う兄弟たちだって自分の死は望まないだろう。無為に数年の月日が過ぎた、ある日。齎されたのは、全てを忘れるという魔法薬だった。

というところまで考えた。薬を飲んで記憶を失った少年が、どーにかなる話。

街の宿屋で目が覚めてもいいよね。旅装で。記憶がなくて不安で戸惑う少年に、宿の食堂で知り合った騎士がなにかと世話を焼いてくれて。特に王族と王宮に関する記憶を魔法で封じられているから、取り敢えず王都から離れなければと思っている。荷物に、何か記憶を思い出す助けとなるものがないか漁る!

この騎士がサポーターなんですけどね。立ち位置をどーするかという話よね。皇太子だった男の取り巻きの一人とか?

スタートが旅の宿屋で、記憶を失った少年が騎士と共に国を旅しながら、封じられた記憶から民の役に立つ知識をポコポコ思い出して善行を施す。でも有益すぎて攫われそうになったりする。で、塔にいたころの夢を見るんですよ。裏切り、悲しみ、空虚、帰れない、何もない、逃げなければ捕まる(混濁)。

いつだって助けてくれる騎士を、でも信じ切れない。体は疼く。記憶が混濁して妄想が混じる。もしかしたら自分は最低な人間なのではないか。だから何かから逃げなくてはいけないのでは? 疑心暗鬼。記憶のない自分が信じられない。

不安が膨らんできた頃に、騎士が誰かとこっそり連絡を取っていることを知る。逃げてしまおうと騎士を撒いたら、暴漢に襲われる。助けてくれたのは騎士2。騎士1は真面目な堅物、武家の出って感じなのに対し、騎士2は細身で狼っぽいヤンキー。親しげな様子に恋人かと思っていたら(なら連絡もするか)

現れた第三の男。いかにも冒険者といったデカくて草臥れた、色気のある男。そいつが騎士2を攫って宿屋にしけこもうとする。大混乱。情報量がいきなり多い。

騎士2と冒険者が脇役えっちい担当。盛っているところを見てしまったり、反発しながら信頼している様子に、ひととは複雑ないきものだと思う少年。この辺で一度くらい騎士1にラッキーすけべ。ご褒美入ります。(私は、私はそんなつもりでこの役を引き受けたわけでは……クッ)。

悶々と火照る体を持て余していた少年が温もりを知ってしまった(抜き合っただけ)。騎士1の腕の中で目覚めた少年は、慕わしい気持ちと裏切りの不安を抱えることになる。

こいつらどこに向かってるんだ?

なお、キスはしていない(騎士のケジメ)。

騎士も少年も、王都には戻らなくてもいいんだよね。騎士1なんか全て捨ててきたからね。兄が第一王子の側近で、諌めるどころか一緒になって男爵令嬢に熱を上げて迷惑をかけて、御家取り潰しの危機だったからね。

天災に人災とドラゴン禍でもトリプルミックスして崖が崩れて、巻き込まれそうになった騎士1を庇って少年が怪我をして記憶を思い出して。ついでのように騎士たちのことを理解して(人を覚えるのは王妃教育の一環だった)。彼らから逃げたらいいのか、塔に戻ったらいいのか分からなくなって。

「あなたの好きなことをしてください。それが皆の望みです」って騎士が跪いて。ふわりと抱きついて「この状況は、正直なところよくわからないのですが。あなたが好きです」って。言ってしまってから、別にこのひとは自分のことなんて好きじゃないか!って離れようと思ったら捕まって。

「私もあなたの事が、一緒に旅をしているうちに離れ難く思うようになりました」って。見つめ合って、めっちゃいい雰囲気で、唇が自然と重なり合う……って瞬間に『バーン!』って扉が開いて冒険者乱入。騎士2が止めて、わちゃわちゃして終わる感じかなー。

本当は王妃様に挨拶に行きたいけど、色々考えたら止めた方がよくて。手紙も騎士2か冒険者が来た時に託すくらいで。崖の崩落があった地域の領主が断罪されて領主の席が空いたから、騎士1が後釜に収まって。少年は騎士1と結婚して、二人で支え合って生きていくのだ。

少年が只者ではないので、辺境伯とかそんな感じかなー。王妃になるはずだったひとで、知識も人脈もあって、独裁権与えられちゃう。つよつよです。

孤児とか拾って息子にしちゃう。めっちゃ教育する。どこに出しても恥ずかしくない子供で、後に王女の夫にと望まれて、断ったのに二人が恋に落ちて結ばれる。ずっと後になって、第一王子の遺児であると分かる。

螺旋の梯子

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