勇者ガチャで優勝しました

初出
2020/06/14 9:20 Twitter

異世界の練習用フィールドを使って陣取り合戦をさせられていたヒヨッコ神々たち。彼らに新たに出されたお題は、ある一定の条件を満たしたものたちの「姿は見えない」「声だけ聞こえる」状態で勇者を選別し、増えすぎた魔物を狩らせるというもの。別名、勇者ガチャ。

ヒヨッコたちは「やっぱり戦闘力の高そうなやつ?」「ねぇガチャって何回まで?」「課金させろー」「うるせえ黙れ、聞こえねぇだろ」とか言いながら異世界に耳を澄ませる。白の陣営のヒヨ神は『目玉潰すー? 潰さないー?』と、何やら不穏な言葉を発している青年を直感で「君に決めた☆」してしまう。

だが、やって来たのは、左手にフライパン右手にフライ返しを持った凶悪な人相をした年若い青年だった。
ヒヨ神「あ、あれ?」
青年「なんだここ?」
ヒヨ神「ハッ! あなたは勇者に選ばれました! 増えすぎた魔物をいい感じに間引いて下さい!」
青年「――その魔物って食えんの?」
ヒヨ神「エッ!?」

戸惑う白ヒヨ神を置いてきぼりに、白の勇者に声をかけるものがいた。黒のヒヨ神に選別された黒の勇者だ。
黒の勇者「君、可愛いね」
白の勇者「え……」
白のヒヨ神「エエッ!?」
白の勇者「お前むかつく」
黒の勇者「そんな変なやつ放っておいて、こっちで二人きりで話そうか?」
手の早い黒の勇者。

白のヒヨ神「ねぇ、黒の。なんでアレ選んだの?」
黒のヒヨ神「どうせなら魔王っぽいのがいいかなって。ほら、うち陣色が黒だし。凶暴そうな思考回路のやつにしたよ」
白のヒヨ神「外見は戦天使だけど中身魔王じゃねーか!!」
黒のヒヨ神「あはは」
白のヒヨ神「笑って誤魔化すなー!!」

黒の勇者は官僚で、白の勇者はオカン系DK。他には引きこもりプロゲーマーやゲーム開発者、BL小説家などがいた。全員男である。彼らの話を統括すると「一度も生き物を殺したり傷つけたりしたことがないもの」という条件が浮かんでくる。「今回の縛りキツくねぇっすか?!」「ほんとそれ」

うーん、と腕を組むヒヨ、頭を抱えるヒヨ。そんな彼らの鼻に肉の焼けるいい匂いが。「え? うちの勇者なにしてるのーー??」見れば突如として出現した豪華システムキッチンで白の勇者が謎肉を焼いている。その傍らには黒の勇者が彼氏面して見守っている。「え? 展開早くない??」呆然ピヨーズ。

白のヒヨ神「何焼いちゃってるの!?」
白の勇者「やっぱり鉄板出して貰うか。キャンプで使うやつ」
黒の勇者「仰せのままに」
手をひとふりしただけで現れる豪華バーベキューセット。「え、なにそれどうやんの?」と湧き立つ勇者たち。
黒のヒヨ神「その肉ってもしかして」
黒の勇者「魔物肉だよ」

「食えるみたいだから、取り敢えず焼いてみるかと思って」という白の勇者は上機嫌である。「お前らも食うだろ?」と他の勇者たちを見れば、手に手に皿を持って列を成している。具現化魔法をマスターした様子だ。黒の勇者は火を見ている。「サンキュー」「どういたしまして」バディか。お前ら夫婦か。

勇者とヒヨ神たちの胃袋を掴んだ白の勇者が優勝。次いで魔王……じゃなかった、黒の勇者が采配し勇者たちを適材適所で働かせ、星のバランスはいい感じに保たれたのである。尚、リセットボタンは黒の勇者に取り上げられましたとさ。とっぴんぱらりのぷう。

番外編。
黒の勇者「白の勇者? 彼は私の隣で寝ていますがなにか?」


補足。
「目玉を潰すか潰さないか」は、目玉焼きのことです。目玉焼きパンを作っていて思いつきました。

螺旋の梯子

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