兄は理想のα様

初出 2020/08/23 14:24 Twitter

オメガバースで、αの兄に滅茶苦茶αの理想とか夢を見ているβの弟。憧れキラキラの眼差しを向けられるので、つい頑張って紳士的で優秀なαでいようと努力する兄。両親は、微笑ましいなと思いながら「無理するなよ？」って兄にこっそり言ってくれるいいひとたち。

父はα、母はΩだけど不妊に悩んで養子にしたのが兄。その後、プレッシャーからの解放が良かったのか自然妊娠したのが弟だった。だから、両親は兄をとても大切にしているし、兄弟仲良くて嬉しい。感謝してる。

バース判定後、αな兄はモテまくるけれど、血統を重んじる輩からは敬遠されがち。でもそれが逆に、庶民からは親しみを感じられたりして。弟に対する優しさや、絵に描いたようなαっぷりは好意的に受け止められていた。弟は、そんな兄が誇らしかった。

両親はαやΩ、βについても今まで二人が経験してきた良い事悪い事を我が子にきちんと話してくれる。正に理想の親子であり兄弟。

この世界、社交に直結する伝統校があるのだけれど、兄は養子で弟もβということもあり、兄弟は通っていない。普通のハイレベル私立高に在学。だがある日、兄宛に伝統校編入の案内が届く。誰が何の思惑で？ と不思議がる家族。兄は「今の学校で不自由していないし、弟と同じところのままがいい」と言う。

伝統校に通う（そしてそこの制服を着る）兄を見てみたい弟だが、離れ離れになるのは嫌だなーと、諦める。弟には、同じβの恋人が出来たばかりでもあった。同じ学校に通う幼馴染で、「この平凡顔がとびきり可愛い」という、兄にも両親にも公認の仲。ほのぼのカップル。

そんな、幸せな日々がひとりのαの出現で呆気なく崩れてしまう。伝統校の存在意義、それは社交と見合いである。年に数回開かれる交流会という名のパーティーは、在校生は勿論のこと、相手が決まっていないOBたちを交えた盛大なものたった。

近年、そんな伝統校の在り方に反発し避けるαやΩの存在もあり、問題視する声も内部からは上がっている。伝統校の理事長秘書というαの男が、兄弟の家を訪ねて来たのだ。彼が言うには、年に一度の外部交流会に兄を参加させて欲しいとのことだった。だが両親は難色を示す。

パーティーには問題も多い。ヒートやラットによる暴行事件は、どれほど注意を払ってもゼロにはならない。特に、伝統校内部では、そういったことは緩いのだ。そんな雰囲気に慣れない外部の人間、兄があてられて間違いを起こしたらと心配する両親。だが弟は「兄さんなら大丈夫だよ」と笑う。

全幅の信頼。そして「兄さんの相手がそこに居るかもしれないんだね」と、夢見る瞳でキラキラしている。弟はαΩ運命論者だった。そして、一度だけ、経験するのも悪くはないと、参加を決める。

パーティー当日。兄は運命の残酷さを知る。彼の運命のΩは、年上の男で、パートナー持ちで、実の兄だった。理事長のパートナーである彼と、生き別れの弟をひとめ会わせるために仕組まれた、善意の……。

互いにヒートとラットを起こし、周囲の者たちに押さえつけられ、薬を打たれて。気がつけば病院にいた。大人たちによる話し合いの末に、二人が今後二度と会わないよう取り決めがされた。兄は抜け殻のように虚ろな顔で、ベッドから降りようともしない。少しずつ衰弱していく。

弟は、毎日病院に通った。後押しした責任もあるが、そうせずにはいられなかった。自分が理想とした、理想を押し付けた兄。彼の人生を思うと苦しくて仕方がなかった。年の離れた弟と、兄が運命だと実の両親は知って兄を孤児院に託したこと。その後、一度も会うことはなく戸籍にも載せていないこと。

養子先で、愛されようと尽くしたこと。αやΩ、βなどというバースを捨ててしまえば、そこにあったのは、ただ彼をずっと愛していたという事実だけだと弟は気づく。恋人とは別れた。彼女は「知ってたよ」と言って涙をこぼした。弟も泣いた。兄の痩せた手を取り、弟は今日も告げる「あなたを愛してる」と。

なんだかんだで想い合っていた二人なので、兄の傷が少し癒えた頃に付き合い始めるんだろうなー。理想の兄がデロ甘くてエロくて大変に困るのは、ほんの少し先の未来。

弟の恋人だった幼馴染のβの女の子は、理事長秘書のα男とくっつきます。心配で様子を探りに来た秘書とばったり鉢合わせて、罵詈雑言浴びせまくって泣いて泣いて泣いて、気がついたら婚約してました。なんでだ？！ そして兄弟に婚約報告しに行ってまた泣くんだ。二人は笑って許してくれるよ！

おしまい。

Ωの実兄は理事長に愛され倒したので向こうもハピエンだよ！ パートナー持ちの実兄より、恋人もいたためしのなかったα養子兄（弟）のほうが精神的ダメージが大きくてキツかっただろうなとは思う。

品行方正、理想のαを演じてきたのに。初めての強制ラットで酷い醜態を晒してしまって、メンタルどん底のボロボロだったところに沁みる弟の献身。

「αの発情があんなに酷いだなんて……。こんな醜い、獣のような欲を無垢なお前に向けたくない」

「兄さん……。いいんだ。ありのままのあなたを見せて？」

多分この兄は言葉責めするね！ 実況もしちゃう。やらしい。

「――僕が脱いでも大丈夫？ 怖くない？ ほら、もうこんなだよ」って。弟は、バキバキα tnk握らされて恥ずかしいこと言わされるんだよ。童貞処女なのに！

ハッピーエンド♡♡♡