はじまりの村は今日も平和に

初出 2020/07/04 21:46 Twitter
タグ遊び
鈴木ファティ‪@fasuzuki2 ‬様のツイートより派生

■元ツイート(鈴木ファティ様)

#いいねしたフォロワーを偏見を混ぜて紹介する見た人も道連れ
いいねで、強制的にBL世界での”受け”に変換して紹介します。
受けです。攻めにはなれないよ!!
帰宅後書くので時間かかると思いますが、おふざけに付き合って下さる方がいればぜひ(*´꒳`*)

というタグ遊びに♥して書いていただいたのがこちら

@room221a 森栖さん!
異世界転生した攻めが出会った妖精受け。美しい見た目に近づいて自分のものにしたいと攻めが思うも、あなたに私は相応しくない…とするりと逃げられちゃう。美しい妖精の抱えている孤独を攻めが初めて知った時、2人はようやく真実の愛を見つけることができたのだが…



「世界の滅亡について、私の見解を聞いてください」
僕が日課のイラクサ摘みをしていると、男が話しかけてきた。勇者鈴木。異世界転生者で、ファティという立派な名があるのに何故か「鈴木」を自称している。外見が優れているため嫌われてはいないが、相当な変わり者だ。

「滅亡……ですか」
また始まった、と僕は思った。勇者鈴木は世界滅亡論者だ。ブツブツと呟きながら村中を歩き回り、ときどき奇声を発している。もはや風物詩、村の名物男だ。
そのくせ狩りの腕は確かだし、彼が提言した治水工事で雨季も洪水がなくなり、疫病は治まり、作物は豊かに実るようになった。

ちーと、と言うらしいが僕にはなんのことだかわからない。彼は優れた頭脳を持ち剣技を磨き、それらを活かす勇気を兼ね備えている。加えての美貌だ。村の老若男女が放っておかない。――はずなのだが、変わり者のためか少し遠巻きにされている。「はぐれ者」の僕に構っても嫉妬されないのは助かるけどね。

でも、それとこれとは別のはなしだ。
「僕は世界は滅亡なんてしないと思うし、忙しいんです」イラクサを摘む手を休めず興味のないふりをする。お願いだからどこかへ行ってくれ。
「つれない君も美しい……」
勇者鈴木は、そう言って僕の手を取った。
「ヒール」
そう唱えるだけで僕の手は無垢に戻る。

だが君は知らない。聖魔法が僕には毒でもあることを。
「……ありがとう、ございます」
一応の礼を言えば彼はおひさまのような笑顔を向けてきた。ひまわりの花のような晴れやかな、正に、勇者に相応しい曇りなき表情。
彼は知らない。僕が手を傷だらけにしラクサを摘む意味も、僕の存在意義すらも。

「ぼくはうつくしくなんてない」
思わずこぼれた言葉は彼の耳に拾われ、大仰に驚いてみせた。
「何を馬鹿なことを。君より美しい者など、この世界広しといえども存在しないだろう!」
腕を振り必死に言い募る君は滑稽で、とても愛らしい。でも僕は知っている。誰より美しい存在、魔王その人を。

世界からはぐれた僕を、拾い育てたのは魔王そのひと。美しき養父。僕は父のために勇者へ近づき、阻止しなければいけない。滅亡の序曲として、この「はじまりの村」を焼き、勇者が魔王討伐へ向かうのを。
「そんな悲しい顔をしないで? 妖精さん」
そう彼が呼ぶ僕の、真実の姿は醜悪な顔をした妖魔だ。

イラクサの服を着て周囲に幻覚を見せている。服は一日で朽ちてしまうから、毎日毎日、仕事の合間に休む間もなく摘み集めなくてはならない。容姿を変えるすべは、僕にはそれしかない。脆弱な妖魔。
「世界は滅亡なんてしない」
君が旅立たなければ。

君が死んでしまえば父を脅かす者がいなくなれば、そう、世界は魔の刻を迎え、幾星霜の栄華を誇ることだろう。
僕はいつの日か君にこの身を捧げ、ヨミの世界に君を連れて行く――。
おしまい( '﹃' )

養父である魔王は、意外と妖魔のことを愛していて、世界がこのままであればいいと思っていそうだなと思いました。
妖魔は弱いので魔王の傍にいるより人間界のほうが生きやすかったり、妖魔は自分が思うほど醜くなかったり(めちゃ弱い。力こそパワーな魔界では羽虫扱い)。
勇者鈴木はまだ覚醒してません。
ほんとうは美しき格闘家の鈴木にしたかった。

螺旋の梯子

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